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【必読】課金制スマートフォンゲームの資金決済法

HALF TIME
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日本でスマートフォンゲームを運営している事業者(ゲーム会社)にとって、遵守しなければいけない法律がいくつかあります。

その中で、特に留意すべきなのが「資金決済法」。
ゲームアプリ内の課金と決済に係るルールについてです。

日本のマーケットで初めてサービスを行うゲーム会社(海外の事業者も含む)は必ず知っておきたいところ。

ここでは資金決済法のイロハを詳しくメモっていきます。
とその前に、先にポイント&結論の整理です。

・資金決済法は「ゲーム内通貨」と深く関わる
・「ゲーム内通貨」は先払い(プリペイド)に該当
・ユーザーは先払いで「ゲーム内通貨」を購入
→ 一部が未使用のままゲーム内に残る
・未使用の「ゲーム内通貨」の残高が1,000万円を超えると届出が必要。
→ 併せて、保証金の供託も必要
・ゲーム会社は財務局等への届出と保証金供託の義務を負う

これを頭の片隅に置いてから、以下を読破してもらえればと思います。

本記事で参考になること
・ゲーム会社が知っておくべき資金決済法が理解できる
・スマホゲーム事業における注意点が分かる
信頼性
・オンラインゲーム事業、運営歴9年。
・海外ゲーム企業の日本進出の支援経験アリ

1. 資金決済法とは?

いきなりですが、資金決済法の概要を貼り付けます。

資金決済に関する法律(資金決済法)は、近年の情報通信技術の発達や利用者ニーズの多様化等の資金決済システムをめぐる環境の変化に対応して、

①前払式支払手段
②資金移動業
③資金清算業(銀行間の資金決済の強化・免許制)

を内容として、2010年4月1日に施行されました。

「一般社団法人日本資金決済業協会」の公式サイトから抜粋しました。

資金決済法について

専門用語がちょくちょく出てきました。
難しいですね。

なので、もう少し噛み砕いて書いてみます。
簡単な文章に置き換えてみると、

コンピュータやデータ通信などIT(情報技術)の発展・進歩によって、お金の移動や決済の方法が変化しています。
これら様々な形の決済手段に対応するために制定されたのが資金決済法です。

具体的には、

商品券やプリペイドカードなどの金券、暗号資産(仮想通貨)の決済、銀行業以外による資金移動業について規定する法律

です。

では、スマホゲームに対しては、どのような適用がなされるのか?

上記の3つの内容のうち、
①前払式支払手段
が該当します。

②と③は無視して結構。

まず最初に「前払式支払手段」とは何かを解説していきます。

メモのイメージ

2. 資金決済法の前払式支払手段とは?

通常の買い物では、商品の購入と同時に、現金などの通貨で支払いを行います。
その場で決済・取引が完了しますね。

一方、商品券やプリペイドカードは、「あらかじめお金を支払う」または「先にチャージ」しておき、商品を購入する時に後から消費します。

この方法を「前払式支払手段」と言います。

前払式支払手段=先払いによる決済の方法

ですね。
漢字が並ぶと抵抗感が出てきますが、「先払いの決済方法」と覚えておけば分かりやすいでしょう。

3. 前払式支払手段の種類

資金決済法での前払式支払手段には3種類あります。

①紙型
②磁気型/ICチップ型
③プリペイドカード型

①はデパートの商品券、カタログギフト券、図書券など。
②はSuicaやPasmoなど現金などでチャージして使用するタイプ。

そして③がiTunesギフトカードやGoogle Playギフトカードなどインターネット上でのコンテンツ購入に利用されるものです。

スマホゲームにおいて前払式支払手段として当たるのが③になります。

しかしながら、事情はもう少し複雑に。
なぜなら、ゲーム内で購入した「ゲーム内通貨」も、この「前払式支払手段」に相当するから。
厳密にはプリペイド「カード」ではないのですが……。

ゲーム内通貨=そのゲーム内でのみ使える仮想通貨

ですよね。
では、もう一度、資金決済法の文章をおさらいしておきましょう。

商品券やプリペイドカードなどの金券、暗号資産(仮想通貨)の決済、銀行業以外による資金移動業について規定する法律

暗号資産=仮想通貨
も資金決済法の規定対象となっていますね。

ここがミソになります。

では、なぜ「ゲーム内通貨」が前払式支払手段に相当するのか。
実際の決済の流れなどを見ていきましょう。

iTunesカード

4. 資金決済法における課金制スマホゲームの位置づけ

名称は様々ですが、ゲームごとに「ジェム」「ダイヤ」といった「ゲーム内通貨」が存在します。
「ゲーム内通貨」はアイテムの購入や体力の回復、時間短縮、ガチャなど色々な目的で消費されますよね。

一般的な「ゲーム内通貨」の入手方法は、

  • イベントなどを通じた無償での獲得
  • 課金による有償での獲得

の2パターンでしょう。

無償での獲得については、資金決済法は関係ありません。
肝となるのは後者です。

ユーザーが課金によって「ゲーム内通貨」を入手した場合、

課金=お金を支払う(決済) → ゲーム内通貨を獲得 → 必要な時に使う(消費)

といった流れになると思います。

「ゲーム内通貨」は購入後に一旦ゲーム内に保留され、ユーザーが必要と思った際に消費しますね。
これはプリペイドカードと同じ扱われ方になります。

よって、スマホゲームの位置づけとしては、

①「ゲーム内通貨」を先払いで購入
②アイテムや商品を購入する際に消費

する行為=前払式支払手段に当てはまるのです。

先払いでゲーム内通貨を付与する行為=前払式支払手段

これが資金決済法がスマホゲームに適用される理由です。
何となくイメージがつきましたでしょうか?

ゲーム内課金のイメージ

この資金決済法を遵守するのは、もちろんゲーム会社
ほとんどの課金制スマホゲームが、前払式支払手段を採用していますので。

そして、前払式支払手段を採用しているゲーム会社(および全ての事業者)は「前払式支払手段発行者」と呼ばれます

漢字が連なる新しい言葉が出てきました。

前払式支払手段+発行者

2つの単語が合わさった名称ですね。

サービスを提供するゲーム会社が知っておくべきなのはコレ。
ここからが本番です。

次項より「前払式支払手段発行者」について掘り下げていきます。

5. 前払式支払手段発行者とは?

「前払式支払手段発行者」とは、前払式支払手段を採用している事業者のこと。
何らかの形で「先払い方式」の決済を行う事業者が、これに該当します。

そして前払式支払手段を採用した事業者は、2つの発行形態に分けられます。

資金決済法での用語では、

・自家型前払式支払発行者
・第三者型前払式支払発行者

では、それぞれの形態を見ていきましょう。

自家型前払式支払発行者

「先払い方式」によって販売した商品券や仮想通貨(=ゲーム内通貨)が、その店やゲーム内のサービスのみ使用可能な場合、その発行者を「自家型前払式支払発行者」(自家型発行者)としています。

少し長いですね。

要は、

  • 自分たちが提供するサービスやゲーム内のみで使える
  • 他のサービスで使用ができない

商品券や仮想通貨を発行している事業者が「自家型発行者」となります。

スマホゲームの「ゲーム内通貨」は、基本そのゲーム内のみで購入・使用できます。
よって、ゲーム会社は「自家型発行者」に属します。

第三者型前払式支払発行者(第三者型発行者)

第三者でも使用可能な商品券や仮想通貨(=電子マネー)を発行している事業者を「第三者型前払式支払発行者」(第三者型発行者)と呼びます。

地域振興券を発行している地元の企業や、SUICAを発行しているJR東日本は「第三者型発行者」になります。

6. 前払式支払手段発行者の義務

このようにゲーム会社は「自家型発行者」に区分されます。
また資金決済法に基づき、以下の義務が課せられます。

①情報の提供
②行政への届出
③発行保証金の供託
④払い戻し(返金)

どれも重要な行為なのですが、スマホゲームおよびゲーム会社にとっては、特に②~④が留意すべきポイントになります。

①情報の提供

ゲーム会社は以下の項目を、公式サイトやゲーム内で開示しなければいけません。

  • 発行事業者(ゲームを運営している会社の名前)
  • 利用可能な金額/支払可能金額
  • ゲーム内通貨の使用期限の有無
  • ゲーム内通貨を使用できる範囲
  • 未使用のゲーム内通貨の確認方法
  • 使用上の注意点
  • ユーザーの相談窓口(住所、連絡先)

「ポケモンGO」を提供している「Niantic, Inc.」(ナイアンティック社)は、↓のように公開しています。

ポケモンGOの資金決済法

②行政への届出

ゲームのサービスが開始されると、多くのユーザーが「ジェム」や「ダイヤ」といった「ゲーム内通貨」を購入しますね。

ただし先ほどの通り、ユーザーが「ゲーム内通貨」を購入しても、全てが消費されるわけではなく、一部は「未使用」のままゲーム内に残ります。
ここでは未使用の「ゲーム通貨」を「保留通貨」と呼ぶことにします。

一般的に、サービス期間が長いほど「保留通貨」は多くなります。

理由は簡単で、

  • 「ゲーム内通貨」を購入したユーザーが増える
  • 離脱したユーザーの「保留通貨」がそのまま残る

から。

時間の経過とともに「保留通貨」が蓄積されていくのです。

そして「保留通貨」(またはその価値)が1,000万円を超えると、財務局長等への届出が必要になります。
これがとても重要なポイント。

例えば、
A会社のゲームでは「ジェム」1個を1円
B会社のゲームでは「ダイヤ」1個を5円
で有料販売していたとします。

この場合、
A社:「ジェム」の合計が1,000万個(価値は1,000万円)に達した時
B社:「ダイヤ」の合計が200万個(価値は1,000万円)に達した時
に、それぞれの会社は届出を行わなければなりません。

売上が伸びている会社は要チェックですね。

申告のイメージ

なお、この届出には基準日が設けてあって、

発行している前払式支払手段の未使用残高(前払式支払手段の総発行額-総回収額)が3月末あるいは9月末において、1,000万円を超えたときは、財務局長等への届出が必要。

となっています。
なので、3月31日もしくは9月30日の時点で、未使用の「ゲーム内通貨」=「保留通貨」が1,000万円を超えていたら、財務局へ届出に行きましょう。

手続きが完了すると、下記のように事業者リストに記載されます。

前払式支払手段(自家型)発行者届出一覧
前払式支払手段(第三者型)発行者登録一覧

③発行保証金の供託

②とセットで理解しておくべきなのが、発行保証金の供託義務。
こちらも超重要ポイントです。

結論から言うと、

未使用残高が1,000万円を超えた時点で、その残高の半分以上の金額を指定の供託所(法務局)に預けなくてはいけない

のです。

つまり、届出の義務が発生したら、保証金を準備して供託するということ。

この理由は、ユーザー(消費者)の資産の保護。
スマホゲームでは、未使用の「ゲーム内通貨」はユーザーの資産に相当します。

ゲームのサービスが終了したり、ゲーム会社が倒産したら、ユーザーの資産は失ってしまいますよね。
なので、

ユーザーが未使用の「ゲーム内通貨」を利用できなくなった場合に、その分をきちんと返金できるよう、ゲーム会社が一定額を確保しておく

必要があるのです。

これを怠るときっと大変なことになるでしょう。

貯金のイメージ

また供託金の義務が生じたら、
②行政への届出
と併せて、「前払式支払手段の発行に関する報告書」を提出します。

②と③がセットになっている理由です。

報告内容は、

  • 基準期間(4/1~9/30または10/1~翌年3/31)
  • 「ゲーム内通貨」の発行額
  • 「ゲーム内通貨」の回収額
  • 未使用の「ゲーム内通貨」の合計額

など。

これに供託した発行保証金の証明書を添えて、提出・報告するのです。

④払い戻し(返金)

サービス中のゲームが終了する場合、ゲーム会社はユーザーに対し、未使用の「ゲーム内通貨」分に相当する金額を払い戻さなければなりません。

これはどんなスマホゲームでも同じ。

ゲーム会社は公式サイトなどにて、サービス終了の日時と返金対応のスケジュールを公示します。

ユーザーは告知に沿って払い戻しの申告・申請を行い、ゲーム会社に返金を行ってもらいます。

この際、③発行保証金が返金に充てられるという仕組みです。
ゲーム会社が最後まで負うべき義務となります。

銀行のイメージ

7. 資金決済法に係る前払式支払発行者の手続き・届出

最後の項目です。
「自家型発行者」として財務局等へ届出を行う場合、まず準備すべきは各種資料。
ざっくりですが、以下を用意しましょう。

  • 発行届出書
  • 登録申請書
  • 誓約書
  • ゲーム会社の履歴書/沿革/概要
  • 株主又は社員の名簿
  • 発行保証金の供託等届出書

など……10数種類に上ります。
手続きに関しては、下記のサイトを参照ください。

■一般社団法人日本資金決済業協会
前払式支払手段に関する内閣府令別紙様式

最後に…

お疲れさまでした。
そして、最後まで閲読いただき、ありがとうございます。

ポイントは「未使用のゲーム内通貨の残高が1,000万円を超える」です。
これを心の中に留めておきつつ、資金決済法を理解してもらえればと思います。

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